2026年11月7日放送
手のひらサイズに広がる秋の世界 「秋の小品盆栽展」

今回取材したの今回取材したのは、山形市の悠創館で開かれた「秋の小品盆栽展」です。 会場には11人によるおよそ80点の作品が並び、手のひらサイズの小さな盆栽の中に、秋ならではの彩りや風景が丁寧に表現されていました。 実ものや紅葉、松柏、山野草――それぞれの一席に込められた世界観を、じっくり楽しめる展示です。

小品盆栽は、木の高さがおよそ20センチまでの盆栽のこと。 小さな鉢の中に自然の景色や季節感がぎゅっと詰まっていて、会場を見て回ると、一つひとつの作品に違った表情があることが伝わってきます。
秋の展示で主役になるのは、実ものや紅葉もの。そこに松柏や山野草を組み合わせながら、季節感のある「席飾り」がつくられていました。
席飾りとは、主役となる盆栽と、その魅力を引き立てる添えを組み合わせる飾り方のこと。 主木にもっとも見応えのある木を据え、草ものや花もの、実もの、秋なら紅葉ものなどを添えて、ひとつの景色や物語を表現していきます。
会場では、出展者がそれぞれ畳一枚分ほどの空間の中で、自分だけの世界を形にしていました。限られたスペースだからこそ、選ぶ木や添え、配置のひとつひとつに思いが込められているのが印象的です。

盆栽の魅力を支えているのは、毎日の手入れです。 枯らさず育てるだけでなく、花を咲かせたり、実をつけさせたりするには、細やかな管理が欠かせないといいます。
盆栽歴およそ30年の大内孝司さんの作品では、鮮やかなピンクのマユミと明るい紫のムラサキシキブが、秋らしい彩りを添えていました。実ものを育てるには、花が咲く時期を見ながら同じ種類を近くに置き、受粉のタイミングを合わせる工夫も必要なのだそうです。花ものが少ない秋は、実ものをどう見せるかが大きなポイントになることも教えていただきました。

一方、20代の頃から50年以上盆栽を続けてきた海谷仁さんの作品には、長年の技術が息づいていました。 白いラインが入った真柏は、白い部分を「シャリ」と呼び、生命のある部分との対比で「生と死」を表現しているそうです。白い部分は彫刻刀などで削ってつくられていて、盆栽が単なる植物の展示ではなく、造形としての奥深さも持っていることを感じさせます。
さらに、枝の曲線が美しいアカマツは、険しい山で育った木のような姿を目指して仕立てたもの。枝にワイヤーを巻き、成長に合わせて少しずつ向きを整えながら、理想の枝ぶりへ近づけていくそうです。形になるまでには3年ほどかかったといい、完成までの時間そのものも作品の一部なのだと伝わってきました。

今回の展示では、特別な思いが込められた席飾りもありました。 昭和50年からともに活動してきた吉田庸一さんをしのび、その作品や、吉田さんが管理していた盆栽が飾られていたのです。
吉田さんは小鉢づくりにも力を入れ、全国大会で賞を受けるほどの実力者だったそうです。現在は工藤さんが盆栽や鉢を引き継ぎ、故人を思いながら手入れを続けています。受け継がれた盆栽には、育てた人の時間や愛情まで重なって見えるようでした。
また、会場で目を引いたのが、畳の上にあえて散らされたどんぐりです。 木から落ちた実を表現することで、「この木にこうした季節が訪れている」という風景が生まれ、一席全体がひとつの絵のように感じられました。
この自由な表現こそ、山形小品盆栽会が大切にしているもの。規制を多く設けず、それぞれが一席の中で思い思いの飾り方を楽しむ。そんな展示だからこそ、作品ごとの個性がより鮮やかに伝わってきます。
会では16人の会員が活動していて、初心者も歓迎しているとのこと。長年親しんできた人はもちろん、これから始めてみたい人にとっても、盆栽の世界に触れる入り口になりそうです。



