2026年10月3日放送
新庄のまちに新しい憩いの場 作家・今村翔吾さんが開いた「羽州茶屋」を訪ねました
新庄駅前通りから南本町の十字路へ進んだ先に、新たなカフェ「羽州茶屋」がオープンしました。 手がけたのは、新庄藩を舞台にした小説『羽州ぼろ鳶組』の作者であり、新庄の観光大使でもある今村翔吾さん。 落ち着いた空間とこだわりのメニュー、そしてこのまちらしい景色まで楽しめる、あたたかな一軒です。

今回訪れたのは、新庄のメインストリート沿いにオープンした「羽州茶屋」です。開店初日から多くの祝い花が並び、店内は開店を待ちわびた人たちでにぎわっていました。
この店を開いた今村翔吾さんは、小説家として知られる一方で、書店や飲食店の経営にも携わる方です。新庄では観光大使を務め、子どもたちと取り組んだダンスプロジェクトでもまちに活気をもたらしてきました。
羽州茶屋は、最初から“カフェをつくろう”と決めていたわけではなく、「新庄に何か拠点を持ちたい」という思いから始まったそうです。人とのつながりを大切にしてきた今村さんにとって、この場所は新たな交流の場。地域に自然と溶け込み、やがて「あって当たり前」と思われる存在になってほしいという願いも込められています。

店内に入ると、今村さんの作品やキャラクターが出迎えてくれます。これまで手がけてきた店舗では、あえて“今村翔吾らしさ”を前面に出さないことも多かったそうですが、羽州茶屋ではその個性をあえて表現。作品をきっかけに新庄を訪れる人にも、立ち寄りたくなるような空間を目指したといいます。
内装づくりにも今村さん自身が関わっていて、見た目の美しさだけでなく、働く人の動きやすさまで考えられているのも印象的です。洗練されていながらも、どこか親しみやすい雰囲気があり、ゆっくり過ごしたくなる落ち着きがあります。
2階席からの眺めもこの店の魅力のひとつ。窓の外には新庄のまちなみが広がり、新庄まつりの時期には山車が通る様子を楽しめるそうです。以前この場所にあった喫茶店の頃から窓辺に思い出を持つ人もいるようで、懐かしそうに席に座る姿も見られました。新しい店でありながら、まちの記憶も引き継いでいるような一軒です。

羽州茶屋では、食事もスイーツもこだわりが詰まっています。
まず味わったのは、近江牛を使ったカレー。滋賀にゆかりのある今村さんらしい一皿で、近江牛のコクとうまみがしっかりと溶け込みながら、辛さは控えめ。子どもでも食べやすいように工夫されつつ、スパイスの風味はきちんと感じられる仕上がりです。試作を重ねながら、味のバランスを整えていったことが伝わってきます。

抹茶メニューも見逃せません。京都出身の今村さんらしく、2種類の抹茶を使ったスイーツは、香りの奥行きが印象的。ふわふわのスポンジとともに、抹茶の豊かな風味を楽しめます。新庄戸沢家の家紋をあしらった意匠も印象的で、この土地とのつながりを感じさせてくれます。

そして、特別な思いが込められているのが手作りチーズケーキです。こちらは、大阪・高槻で引き継いだカフェのレシピをそのまま使っているそうで、その歴史はおよそ50年。長く受け継がれてきた味が、山形・新庄の地でも楽しめるのは興味深いところです。チーズのコクはしっかりありながら、後味はすっきり。表面の香ばしさにも試行錯誤が重ねられていて、丁寧な仕事ぶりが感じられます。
このほか、コーヒーは酸味が控えめで飲みやすいと好評。今後は季節ごとの新メニューも展開していく予定とのことで、訪れるたびに新しい楽しみがありそうです。
今村さんにとって新庄は、「帰って会える人がいる場所」。土地そのものだけでなく、人とのつながりがあるからこそ、ふるさとと呼べるのだといいます。
デビュー後、多くの読者に支えられてきたなかで、新庄の人たちの応援が大きな力になったことも、この店を開く後押しになったそうです。恩返しの気持ち、そして縁を大切にしたいという思いが、羽州茶屋の土台にあります。

「道なき道を行く」という考え方も、今村さんが大切にしている姿勢のひとつ。前例があるかどうかではなく、必要だと思った場所へ一歩踏み出す。その積み重ねが道になっていく――そんな思いが、この店づくりにも重なります。
新庄まつりの熱気、ゆっくり深まる人との絆、表には出しすぎないけれど内に熱いものを持つ人たち。そうした新庄の魅力を大切に思う気持ちが、この場所には自然なかたちで息づいていました。

取材情報
羽州茶屋
新庄市本町3−51
オープン:11時
ランチ:L.O.14時
カフェ:L.O.17時30分
定休日:日曜日



