2026年9月26日放送
庄内町で見つけた、手仕事の生糀。92年の歴史を受け継ぐ「さくら糀屋」と発酵料理のやさしいおいしさ
米どころとして知られる庄内町で、丁寧に米こうじを作り続ける「さくら糀屋」を取材しました。 温度管理がものをいう繊細な製造現場では、今も多くの工程が手作業で行われています。 さらに、さくら糀屋のこうじを使った料理が味わえる発酵料理専門店にも足を運び、こうじの奥深い魅力を体感してきました。

今回訪ねたのは、米こうじを専門に扱う「さくら糀屋」。92年前に創業したこうじ専門店の流れを受け継ぎ、今も県内各地に商品を卸している製造所です。
店主の國本さんが事業を継いで3年目を迎え、製造所も新しい場所へ移転。もともと、こうじに使うお米には國本さんの夫が育てた米が使われていたそうで、その縁から声がかかり、事業を引き継ぐことになったといいます。
長く続いてきたこうじ屋の歴史を守りながら、新しい形で次につないでいく。そんな前向きな空気が、現場全体に流れていました。

製造室に入ると、まず感じるのはじんわりとした熱気。こうじ菌が育ちやすい環境に保たれていて、まるで“やさしいサウナ”のような空間です。
こうじ作りは、およそ4日かけて進みます。取材時は3日目。こうじ菌をつけて一晩寝かせた蒸し米をほぐし、熱を冷ましながら状態を均一に整える大切な工程の最中でした。その後は棚に入れてさらに一晩寝かせ、翌朝に完成するそうです。
現場で何度も聞こえてきたのが、「温度が命」という言葉。わずかな温度の変化が仕上がりを左右するため、全工程を基本的に手作業で行っているのも印象的でした。手で触れ、目で見て、感覚を頼りに整えていく仕事には、長年培われてきた技術の積み重ねが感じられます。
蒸し米の中には、透明感のあるものと、少し白くなっているものがあり、白くなっている部分がこうじ菌の入った証。目には見えにくい変化をひとつひとつ確かめながら、こうじは育てられていました。
こうじは甘酒や漬物、味噌などに使われるため、冬場は特に需要が高まるそうです。製造の頻度も、夏場は週1回ほど、冬場は週に2~3回と季節によって変わります。

完成した生糀は、板のようにまとまった状態になるのも特徴です。さくら糀屋のパッケージには、「甘い」と書いて“うまい”と読ませる言葉が使われています。これには、國本さん自身がこのこうじで作った甘酒を飲んだとき、「お米って甘いんだ」と驚いた体験が込められているそうです。
実際に甘酒をいただくと、印象的だったのは、お米のやさしい香りとすっきりした飲み口。濃厚すぎず、爽やかさも感じられる一杯で、こうじの持つ自然な甘みがまっすぐ伝わってきました。

さらに今回は、さくら糀屋のこうじを使った料理を味わえる「庄内発酵堂」へ。発酵料理の専門店でいただいたランチプレートは、彩り豊かで、見た目にも気分が上がる内容です。

驚いたのは、プレートの料理すべてにこうじが使われていたこと。たとえば唐揚げは、鶏むね肉を塩こうじに漬け込むことで、やわらかくしっとりとした食感に。こうじによって旨みとコクが加わり、あっさりとしながら満足感のある味わいに仕上がっていました。
付け合わせの大根には、ビーツやスパイス、塩こうじを使用。クミンの香りがアクセントになっていて、発酵のやさしさの中に、ほどよい個性も感じられます。
野菜スープには、にんにくこうじ、マッシュルームこうじ、玉ねぎこうじの3種類を使用。ひと口飲むと、味の角が取れたようなまろやかさが広がり、野菜のおいしさが自然に引き立っていました。
使われているこうじは、特別栽培米を使ったもの。もともとごはんとして食べてもおいしい米を原料にしているからこそ、料理になったときのやわらかさや味わいの深さにも違いが出るのかもしれません。料理を通して、こうじが持つ力の大きさを改めて実感しました。
取材情報
生糀専門店 さくら糀屋
庄内町余目三人谷地 2番地9
庄内発酵堂
庄内町余目沢田14



