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2026年9月5日放送

鶴岡市

鶴岡の在来野菜を漬物に。創業1908年の老舗「本長」で味わう、土地に根づくおいしさ

今回取材したのは、鶴岡で100年以上続く漬物店「本長」です。 立派な建物の中には大きな吹き抜けが広がり、店に足を踏み入れた瞬間から老舗ならではの風格が感じられます。 地元の在来野菜を生かした漬物づくりを大切にしてきたこの店で、旬の味わいと、受け継がれてきた手仕事を見せてもらいました。

本長は、明治41年(1908年)創業の漬物店。店を守る4代目社長の本間光太郎さんに案内していただきました。

鶴岡市は、60種類もの在来野菜が受け継がれる食文化の豊かな地域です。2014年には、食文化を生かしたまちづくりに取り組む「ユネスコ食文化創造都市」に認定されました。

本長の漬物づくりも、そんな土地の恵みと深く結びついています。民田なす、だだちゃ豆、黄金ミョウガなど、季節ごとの在来野菜を中心に漬物を仕込み、素材の持ち味を引き出してきました。

「民田なす」の“民田”は地名。鶴岡では、地名が名前についた野菜が多く、昔から身近な土地で採れる野菜を大切に使ってきたそうです。本長の原点にも、地元の野菜を生かしたものづくりの姿勢が息づいていました。

この時期ならではの漬物もいただきました。

まずは「民田なすの浅漬」。ヘタつきのまま味わえるのが印象的で、ひと口食べると、しっかり締まった果肉の歯ごたえが際立ちます。中まで味がしみ込みながらも、なすそのものの食感がきちんと残っていました。

続いて「民田なすの粕漬」は、酒粕の風味がぐっと感じられる濃厚な味わい。庄内らしい酒どころの魅力が、そのまま漬物にも生きているようです。

さらに、鶴岡市外内島地区で受け継がれてきた「外内島きゅうり」を使った「味噌良漬」も。こちらは、味噌と酒粕をブレンドした本長オリジナルの漬物です。シャキシャキ、サクサクとした軽やかな食感に、味噌のコクとほんのりした甘さが重なります。名前の「味噌良漬」は、味噌漬と奈良漬、それぞれの良さを取り入れたことに由来しているそうです。

最後にいただいたのは「民田なすのからし漬け」。表面にはしっかりとした辛みがありますが、噛むほどに、なす自体の甘みが感じられるのが特徴です。辛みと甘みのバランスが楽しく、後を引く味わいでした。辛さが苦手な場合は、封を開けて冷蔵庫で2〜3日置くと、辛みが抜けて食べやすくなるそうです。

同じ民田なすでも、浅漬、粕漬、からし漬けと表情はさまざま。味付けによって素材の魅力が違って見えるのも、本長の漬物のおもしろさです。

民田なすの魅力をさらに知るため、畑にも足を運びました。案内してくれたのは、民田なすをおよそ30年にわたって育ててきた長谷川精三さんです。

長谷川さんの畑は約7アール。そこに500株もの民田なすが植えられています。形は真ん丸ではなく、少し楕円形。収穫するのは、およそ3センチに育った実で、最盛期には1日に20キロほどを収穫するそうです。

作業は、身が締まる朝の涼しい時間帯に行います。長谷川さんが大切にしているのは、「どうせ漬けるから」と考えず、鮮度のよいうちに、条件のよい状態で収穫すること。素材がよければ、漬物としてもよいものになる――そんな思いで畑に立ち続けています。

民田なすは、江戸時代に京都から伝わり、300年以上受け継がれてきた在来野菜です。一方で、ここ数年は気候の変化によって育てる難しさも増しているとのこと。暑さに強い別の品種を選ぶことはできても、在来野菜を守るためには品種を変えられない。そうした葛藤の中で、伝統の味を未来につなごうとする姿がありました。

店の魅力は、商品だけではありません。蔵に入ると、漬物づくりを支える手仕事の積み重ねが見えてきます。

まず見せてもらったのは「粕蔵」。中には酒粕の香りがふわっと広がり、主に粕漬けに使う酒粕を熟成させています。本長では、庄内の地酒の酒粕を使用。毎年、新酒が出る1月ごろに1年分を仕入れ、板状の酒粕を樽に入れて足で踏み込み、20度前後の蔵でおよそ1年かけて熟成させるそうです。硬い板粕のままでは漬けられないため、クリーム状の“練り粕”にしてから使います。

続いて案内された漬物蔵には、200年以上前につくられた木の樽が今も現役で使われていました。主にウリを漬けるための樽で、地面に埋まっており、深さはおよそ2メートル。大きな樽の中に人が入り、手作業で塩漬けを行うといいます。

漬け方には、浅漬けと古漬けがあり、古漬けでは最大1年ほど置くことも。塩分20%ほどで漬けることで、腐敗やカビを防ぎ、保存食としての役割を果たしてきました。

取材時には、収穫されたばかりの民田なすを塩漬けする「粕塩蔵」の作業も行われていました。塩と、しょっぱい酒粕の両方で漬け込む方法で、こうして仕込まれた野菜は、およそ1年後に取り出され、塩を抜きながら加工されて食卓へと届けられます。

畑で育てる人の思いと、蔵で仕込む手仕事。その両方が重なって、本長の味がつくられていました。

取材情報

本長

鶴岡市大山1丁目7−7