2026年7月11日放送
黄色い花に宿る“紅”の魅力 白鷹町でめぐる紅花畑と旬の味わい
今回訪れたのは、紅花の里として知られる山形県白鷹町。 咲き始めたばかりの紅花畑では、この土地に根づく栽培の歴史や、人の手で受け継がれてきた文化に触れることができました。 紅花染めの体験や、地元食材を生かした“紅ランチ”まで、白鷹町ならではの楽しみをたっぷりご紹介します。

まず足を運んだのは、白鷹町・中山地区の紅花畑。 取材した時期は、ちょうど咲き始めたばかりで、広い畑の中に黄色い花がぽつぽつと見えはじめていました。これから花が増えていくと、畑一面が鮮やかな黄色に包まれるそうです。
“紅花”という名前から赤い花を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、咲いている花は黄色。地元の方によると、紅花には黄色の色素が大部分を占め、紅の色素はごくわずかしか含まれていないのだとか。花の根元あたりに、ほんのりオレンジがかった色が見えるのも印象的でした。
紅花は、摘み取ってから水洗いし、三日三晩ほど手をかけながら寝かせることで、黄色が抜け、少しずつ紅の色が引き出されていくそうです。時間と手間を惜しまない作業の先に、あの美しい“紅”が生まれると知ると、花の見え方も変わってきます。

中山地区では、上原紅花会の皆さんがおよそ1.4ヘクタールの畑で紅花を栽培しています。 実際に摘み方を教わると、花の下にはしっかりと棘があり、見た目以上に繊細な作業。手袋なしで触れてみると、その鋭さに思わず驚かされます。棘を避けながら、根元から丁寧に摘んでいく手仕事には、経験の積み重ねが感じられました。
畑では、30年ほど紅花摘みに携わってきた佐藤さんから、新しいメンバーへと栽培が引き継がれていました。先輩たちから受け継いだ畑をきれいに咲かせ、多くの人に見てもらいたい――そんな思いも、この場所の風景をよりあたたかく感じさせてくれます。
白鷹町は、紅花文化の継承にも力を入れている町です。 紅花栽培は古くから行われ、江戸時代には金の10倍、米の100倍ともいわれるほど価値のある品として扱われたという紅花。水はけのよい傾斜地や、乾燥を好む植物の性質も、この地域の栽培に適していたそうです。土地の条件と長い歴史が結びついて、今の紅花の景色が守られていることが伝わってきました。

白鷹町では、畑だけでなく町のあちこちで紅花の魅力に触れられます。 紅花まつりでは、白鷹グルメのほか、紅花にまつわるさまざまな体験が楽しめます。
なかでも印象的だったのが、小松織物工房による紅花染め体験です。 染液をアルカリ性の状態から酸で中和していくと、紅みが増して発色していくという紅花染め。やわらかな色合いの中に、紅花ならではの上品さがありました。貴重な染料だからこそ大量に使うのは難しいそうですが、生産者の努力に応えるように、作り手も質の高いものづくりに向き合っていることが伝わってきます。
荒砥駅でも、紅花を使った品々に出会えました。 紅花の色素で色づけした羊羹や、紅花畑のはちみつ、バッジやマスキングテープといった雑貨まで並び、見ているだけでも楽しい空間です。さらに、白鷹町と徳島県上板町のつながりから生まれた藍と紅のコラボレーション商品も。紅花の文化が、食や工芸、地域交流へと広がっていることを感じました。

紅花の魅力を味わいで楽しむなら、白鷹町の本格イタリア料理店「SIATTACA」も見逃せません。 店名は“白鷹”をイタリア語風につづったもの。地元の食材で、その土地らしさを表現したいという思いが込められています。

いただいた“紅ランチ”は、白鷹の野菜をふんだんに使った一皿一皿が並ぶコース。 なかでも印象に残ったのは、紅花と一緒に漬けたカブのピクルスです。もともとは白いカブが、紅花の色で鮮やかな黄色に。味わいはやさしい甘さの中にさっぱりとした酸味があり、食感もよく、素材の持ち味がしっかり生きていました。
サラダは、ゆで卵を細かくして散らしたミモザ風。そこに紅花の乱花を合わせることで、いつもの黄色とはひと味違う、紅花らしい色合いが楽しめます。 ドレッシングも素材の味を引き立てる仕立てで、フレッシュな野菜のおいしさがまっすぐに伝わってきました。
パスタは、トマト、にんにくオイル、塩、バジルというシンプルな構成。 使っているのは地元のトマト2種類で、火を入れることで甘みやうまみがより濃く感じられます。余計なものを足さず、素材の力でおいしさをつくる一皿は、地元食材への信頼があってこそ。もちもちのパスタとあわせて、旬の豊かさを存分に味わえました。
ドリンクにはベニバナ茶、デザートのカッサータには紅花入りのソースを使用。 最後まで“紅”にこだわったコースになっていて、白鷹町らしさを食で楽しめるのが魅力です。
店主の足立さんは、有名店での修行やイタリアでの経験を経てこの店をオープン。実家が果樹栽培を営んでいることもあり、食材への思いはひときわ強いそうです。 毎年続けている季節のメニューもあり、「旬のものを旬のうちに味わってほしい」という言葉どおり、その時期ならではのおいしさを大切にしていることが伝わってきました。
取材情報
イタリア料理 SIATTACA
白鷹町荒砥乙553



