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JAの概算金 大幅増 新米の季節 気になる価格は
実りの秋、新米の季節を迎えています。
その山形県産の新米価格は大幅な値上がりが予想されています。
農家にとっては経営の支えとなる一方で、消費者にとっては一体、店頭にはどんな価格で並ぶのか、気になっている人が多いと思います。
新米シーズンに揺れるコメの価格を取材しました。
山形県長井市でコメを栽培する横澤芳一さん(72)です。
30年ほど前から市内、3軒のコメ農家と連携して年間で30トンほど消費者に直接コメを販売しています。
10月から新米に入れ替わるのに合わせて値上げに踏み切ることにしました。
「肥料は上がってる。機械は上がる。農薬は上がる。燃料費は上がる。生産コストもかなり上がってるから。ぎりぎりのところでやってる。」
「どうなることやら。」
これまで全銘柄5キロ税別3000円で販売していましたが、10月から千円アップの4000円に。
それでも、生産コストの高騰もあり「追い風」とはなりきれていません。
さらに、
「値段が上がってくるのは生産者としてはありがたいことだけども、どっちもね塩梅が・・・。」
経費高騰と消費者への配慮。
板挟みの状況です。
9月8日、向かったのは顧客のもと。
市内のコメの配送は横沢さん夫婦が直接行っていてこの日、初めて、値上げを伝えます。
「来月からの新たな価格が受け入れられるか・・・。」
新たな価格はおおむね受け入れらているようです。
「よかったっていうのもあるし心苦しいってものある。複雑な感じ。」
コメの価格が上がった背景には、生産コストの上昇に加えて需給のバランスが崩れたこともあげられます。
国の減反政策は2018年産米から廃止されましたが、農家はその後も政府が示す需要の見通しに沿った生産を続けていて事実上の生産抑制が続いてました。
「ぎりぎり生産調整ということで作らせなかったっていうのもあるし、(国の)見通しが甘かったのかなと感じる。おコメが足りなくなってようやくわかったのかなと。」
こうした状況のなかJA全農山形は2025年の新米について農家への前払い金にあたる「概算金」の大幅な引き上げを決定しました。
一等米60キロあたりで2024年よりも1万1500円の増額で制度導入以来の過去最高額となりました。
高値が予想される今シーズンの新米。
実際にどのよう価格で消費者に届くのでしょうか。
「実際に精米5キロあたりで去年産米に比べて1000円から1100円ほど値段があがるということになる。」
米沢市で1868年・明治元年創業の老舗コメ店を営む渡部正男さんです。
県内で第一号となる「お米マイスター」の認定を受けたコメの専門家。
店頭に並ぶのは渡部さんが厳選した特別減農薬米などで多くは直接農家から買いつけたものです。
実際に2025年の概算金をベースに新米の店頭価格を算出すると、つや姫5キロで5800円という計算に・・・。
「仕入れ値が高騰した分はどの程度まで価格転嫁できそうだと感じてますか?」
「それが一番大変なところで、上がった分だけ満額転嫁できれば楽ですけど。」
2024年から始まった値上げの波に消費者の戸惑いも感じ取っています。
「5年産米に比べ6年産米はほぼ倍でお客さんにしてみれば急にあがっちゃったのでもちろん戸惑われてるのを感じます。」
過去最高水準となったコメの価格。
小売りの現場では激しさを増す集荷競争と消費者の戸惑いの両方に向き合うことになりそうです。
「引き続き買っていただける価格になるのかものすごく心配しています。」
このコメの価格の高騰はいまだけの現象なのか、それとも構造的に続いていく問題なのか。
背景と今後の見通しをコメの流通に詳しい専門家に聞きました。
「高くなってるのは構造的。国の方で要因分析を閣僚会議で報告されていますが、それを見ても需要に対して生産供給量が足りない、ということを国自身が認めた。そういう意味では構造的です。」
短期的には作柄次第で変動の可能性もあるといいますが、確かな見通しを立てるのは難しい状況です。
「なんといっても情報が少ない。政府からの情報が作柄を発表しないことになったので雲を掴むような状態になっている。それで疑心暗鬼になっているし、この猛暑だし渇水というメッセージもある。足らないんじゃないかというので集荷競争に走ってるのではないかと思います。」
県内でもまもなく新米が並ぶ時期です。
コメを取り巻く状況は私たちの食卓に直結する課題です。
変わりゆくコメ作りの現実をどう受け止めるか、一人ひとりが向き合う時を迎えています。