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庄内町長選 外国出身の候補者スルタン氏に密着

参議院選挙と同じ、20日に投開票が行われた庄内町長選挙。

現職の無投票当選の可能性もあった中で、意を決して立ち上がったのは、外国出身の町議でした。

人口減少によって、外国人材の活躍が増える中、政治の世界にもその選択肢は広がるのか。

選挙戦に密着しました。

7月20日、勝敗が決した庄内町長選挙は、現職の富樫透(とがしとおる)さんが再選を果たしました。

富樫さんの陣営が歓喜にわいていた頃、敗戦の一方を受けたのは、新人として立候補したスルタン・ヌールさん。

その表情はどこか晴れやかで、清々しさを感じさせるものでした。

シリア生まれ、エジプト育ちのスルタンさん。

エジプトでは、国家公務員として働いていましたが、29歳の頃、憧れがあった日本にやってきました。

2013年に日本国籍を取得。

その3年後、自然の豊かさに惹かれて庄内町に移住しました。

スルタンさんにとって転機となったのが、2021年に行われた町議会議員の補欠選挙。

議員のなり手不足が深刻化する中で立候補し、県内では初めて、外国出身者で町議会議員となりました。

町議として活動して4年が経ち、次は町長選挙へ。

なぜ政治の世界へと挑み続けるのでしょうか?

「2013年の帰化してから、日本人としての考えしかない。外国人の心ではなく。本当に日本人で・・・。顔は違うかもしれないけど、心は日本人として、日本に住んで、子どもを産んで、日本の学校に通わせて、立派な政治ができるように一生懸命頑張りたと思っている。日本のために全力を尽くしたい。」

選挙が告示された7月15日。

スルタンさんは、有権者が集まりやすい、中心部ではなく、自らも暮らす立川地域で第一声を上げました。

「私は、地域間の格差を無くす、誰もが安心して暮らせる庄内町を目指して選挙に立候補した。」

2005年、余目町と立川町が合併して生まれた「庄内町」。

スルタンさんは、商業施設や病院の数など、地域間で格差が生まれていると感じ、その是正などを公約に掲げました。

後援会を持たず、ごく少数のスタッフとともに地道に選挙戦を続けるスルタンさん。

それでも、町議時代の頑張りを知る町民たちは1人の候補者として真摯に耳を傾けてくれます。

「庄内町全体のため働きます。よろしくお願いします。ありがとうございます。」

「(庄内町は)人口減が問題。企業誘致しないと若い人たちがどんどんこの町から去っていく。(スルタンさんは)斬新な気持ちを持っている。両候補、どちらもそれぞれ良い主張をしているので悩んでいる。」

「人事を尽くして天命を待つ。ありがとうございます。」

「頑張ってください。」

「頑張ります。バイバイ。」

午後8時すぎ。この日の遊説を終え自宅に戻ったスルタンさん。

妻・バヤンさんお手製のシリア料理をスタッフとともに食べて英気を養います。

町議時代の仲間、奥山康宏(おくやまやすひろ)町議は町に海外企業を誘致をして、人口減少を食い止めたいと、スルタンさんの応援を決めました。

「スルタンさんは、行動力もありますし、思い立ったらすぐ実行する方なので、そこに期待している。」

「自分は海外出身だから海外のことも日本のことも分かる。両方の視点が持てる。日本人として精一杯、日本のために力を尽くしたい。やっぱり友人と、家族が一番大事ですね。家族を信じて前に向かうしかない。」

迎えた7月20日の投開票日。

スルタンさんは、現職を相手に6千票以上の差で敗れました。

悔しい結果とはなりましたが、スルタンさんは、自分が立候補した意味はあったと確信しています。

「まだこれからだよね。大丈夫!」

「やり切ったが、まだ足りなかった。だからこの結果が出た。次はどんなチャレンジをするか決めていないが、町民のみんなに応援してもらったことに感謝している。」

参院選では、外国人をめぐって様々な議論もありましたが、スルタンさんは、住んでいる地域をより良くしたいというシンプルな思いで活動しているんだと感じました。

スルタンさんは、今後も庄内町のために活動を続けていくということです。