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南陽市山林火災 二次災害の危険性について考える

 山形県内では過去10年で最大規模となった南陽市の山林火災。発生から1カ月が経ったいま、有識者が指摘するのは、洪水や土砂崩れなど二次災害の危険性です。
 森林の機能が失われたことによる影響や今後の課題について考えます。

 5月4日、南陽市の秋葉山で起きた山林火災は、9日にわたって燃え続け、県内では過去10年で最大規模となる137ヘクタールが焼けました。

 発生から1カ月。現場上空からは被害範囲の広さがうかがえました。
 そこには青々とした木々が立ち並ぶかつての光景はなく、焼け焦げた葉は黒く変色しています。

「見渡す限りの木や葉が焼けて変色していてあたり一面真っ黒です。」

 警察や消防による実況見分が終わったことで、取材での立ち入りも可能になりました。地上でみると火災の爪痕が色濃く残っていました。

「このあたり木や枝が焼け落ち、土壌がむき出しになっています。」

 今回の山林火災で指摘されているのが森林機能の低下です。
 5月、現場を視察した林野庁の担当者は、土砂が流れ出る危険性に言及しました。

【林野庁森林保護対策室長 門脇裕樹室長】
「林野火災が発生したということで森林の機能が低下しているので今後大雨が発生した際に表土の流出とか土砂流出の危険がある。」

 山の災害に詳しい森林総合研究所の玉井幸治さんによると、火災による森林機能の低下は様々な二次災害のリスクを高めるといいます。

【森林総合研究所 玉井幸治研究ディレクター】
「一般的に林野火災の前と後を比べるとその場所での洪水災害、土砂災害のリスクは高まるとは言える。」

 リスクを高める要因のひとつが、火災によって焼け落ちた灰です。

【森林総合研究所 玉井幸治研究ディレクター】
「林野火災の跡地に残った灰は水をはじく性質があります。森林に降った雨水が森林土壌にしみこまずに地表面を流れる量が増える。森林土壌が表面侵食されたりあるいは河川へと非常に速やかに流出することになって洪水リスクが高まることがある。」

 過去の事例をみると、2014年に群馬県・桐生市を中心に発生した山林火災では263ヘクタールの森林が消失。その2カ月ほど後に、1時間で20mmほどの雨が降った際、土砂が山道まで流出する被害が確認されました。
 
【森林総合研究所 玉井幸治研究ディレクター】
「樹体は燃えてしまって根っこは生き残ったとしてもやがてその根っこも枯れてしまう。斜面崩壊を防ぐ力がなくなっていく。実際桐生の場合でも斜面崩壊が何か所か発生している。」

 さらに、山形の場合は、雪国ならではの危険性もあるといいます。

【森林総合研究所 玉井幸治研究ディレクター】
「積雪地の場合は雪のクリープを木の切り株が(腐っていると)おさえられなくなって雪崩が発生するようになるので雪崩常習地になってしまうと雪崩によっても森林土壌が失われて、水源涵養機能が損なわれるので積雪地の場合はより注意が必要」

 これから梅雨の時期を迎え、二次災害の危険性がさらに高まる秋葉山。付近の住民や農地への被害を防ぐため、南陽市では早期の対策を検討しています。

【南陽市 白岩孝夫市長】
「国、県と連携した仮称であるが秋葉山再生連絡会議を設置して森林景観の回復と同時に土砂災害防止対策を検討していく」

 市は6月14日に国や県と連携した会議を開催する方針です。