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「浪江から長井へ」鈴木酒造店の14年
14年前、津波と原発事故で被災した福島県の酒蔵が、避難先の長井市で今も酒造りを続けています。
先週末、地元のフォークソンググループが酒蔵を会場に交流イベントを開きました。
長井市の農家らでつくるフォークソンググループ「影法師」。
結成から51年、東北に根ざし、農家の目線で社会への怒りを歌い続けてきました。
この日、歌声を響かせたのは市内の酒蔵です。影法師が毎年、新酒の完成を祝って開く「酒蔵利き酒コンサート」。
訪れた人たちは日本酒を味わいながら音楽を楽しんでいました。
【インタビュー】「毎年来ているんですが、これでようやく春が来たなと感じる。なかなかコンサートを聞きながらお酒をいただけるところがないんですよ。非常に楽しい」
コンサート会場となったのは、長井市内にある鈴木酒造店長井蔵。営んでいるのは鈴木大介さんです。
「私たちがこの長井に来たのが震災で14年。その年の秋から長井蔵を立ち上げた」
14年前、津波で福島県浪江町の江戸時代から続く酒蔵を失いました。
さらに原発事故の影響もあり、避難を余儀なくされた鈴木さんは、廃業を検討していた酒蔵を受け継ぐ形で山形に移り住みました。
【鈴木大介さん】「やるからには山形の人間になって酒造りをやって、できることはやっていこうとその気持ちで向かっていく」
水も気候も違う見知らぬ土地での酒造り。
こうした中、影法師から酒蔵でのコンサートを鈴木酒造でも引き続き開催したいと提案を受けます。
【影法師・遠藤孝太郎さん】「最初は私たちもおっかなびっくりだったが、地元と繋ぐきっかけが作れたのは本当に良かった」
蔵人と地元の人たちを結び続けてきたこのコンサート。鈴木さんにとって心の支えになってきたと話します。
【鈴木大介さん】「イベントを通じて長井の人たちと交流ができるというのはありがたい機会をずっといただいているなと感じる。長井の人たちが温かく受け入れてくれたので、自分たちにとっては再生の場所となった」
4年前に古里・浪江町に酒蔵を再建し、現在は2つの拠点での酒造りを両立させています。
【鈴木大介さん】「福島と長井で事業をさせてもらっているが、その土地のポテンシャルを引き出せるような、そのための理解もこのイベントで与えていただいているので、そのポテンシャルをしっかり伝えていくのが自分たちの仕事だと思ってこれからも続けていきたい」
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