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めまぐるしく変わる天候に翻弄された農業を振り返る

 今年あった出来事をシリーズで振り返る「山形ニュースこの1年」
 4回目のきょうは、めまぐるしく変わる天候に翻弄された農業です。

 7月。山形県内を襲った記録的な大雨は、人々の暮らしだけでなく、コメや果物など山形が誇る農業をも飲み込みました。

「こちら酒田市特産の刈屋梨の園地なんですが近くを流れる川があふれたことで流れてきた土砂や流木によってもとの姿が分からない状態」
 こちらは被災直後に撮影された映像です。

 川幅が狭く、普段は流れも穏やかな川が突然、牙をむきました。

【刈屋梨農家 伊藤光一さん】
「棚壊れてるじゃん。うわぁ全滅だな」

 収穫まではあと1カ月ほどという時期でした。

【刈屋梨農家 伊藤光一さん】
「言葉にならないとういうのが正直なところ」

 農林水産関係の被害額は現在、294億円にのぼり、過去最悪の農業被害となっています。中でも被害が多かったのは、田んぼの浸水です。

【コメ農家 今田久一さん】
「これから穂が出て一番重要な時期、それに対しての病気.。響は計り知れない」

 東北農政局が発表したコメの作況によると、被害が多かった庄内・最上は、東北で唯一、5段階で最も悪い「不良」となりました。
 大雨被害が影響したとみられています。

 そのコメをめぐっては、全国的な品薄、『令和の米騒動』が県内にも押し寄せました。

「状況良くなるというがいつ良くなるか」
「なんとか生活している」

 去年のコメが、猛暑によって不作だったことなどが影響したとみられ、騒動は新米が流通し始めた秋頃、ようやく落ち着きました。
 大雨被害や暑さによるコメ不足など、激動の1年となった県産米。こうした状況から県は、暑さに強い雪若丸をはじめ来年産のコメを増産する方針です。

 年々、深刻化する温暖化は、山形が誇るルビー色の果実にも影響を与えました。

【サクランボ農家 武田駿さん】
「これも双子だしこれも双子ここにも双子。多過ぎる」

 今年、県内のサクランボ園地で大量発生した双子果。花芽が形成される前の年の夏、つまり、去年の記録的猛暑が影響したとされています。
 さらに今シーズンは、収穫時期の暑さが追い打ちをかけました。

「これが高温障害」

 6月にも関わらず、気温が30度を超える季節外れの高温。登熟が進みすぎてしまい、収穫が追いつかなくなる『ロス果』が多くなりました。

【JA山形中央会 折原敬一会長】
「近年類を見ない凶作」
【山形市ブランド戦略課 高橋大課長】
「収穫直前にあんな気候が続くと申し訳ないが対応をとるのが難しい現状で1万2000件ほど確保ができていない」

 今シーズンの収穫量は、平年の65%程度となる「8700トン」と衝撃的な数字に終わりました。

【農家 武田駿さん】
「今後、山形の天候の中でサクランボをつくっていくなら天候に抗うようにしていかないといけない」

 県では、ハウス内の温度を下げる遮光シートの実証実験や、暑さに強い品種の開発など、『天候に抗う術』を模索しています。
 さらに、暑さに対応して「どう売るのか」も今後の課題です。

「味もうまい、うまいです」
「食べられるものだから無駄のないように」

 各JAの産直施設では、これまで扱ってこなかった双子果が、訳あり品として販売されました。
 値段は下がるものの、今後、農家の手取りアップにつながる可能性もあります。

 来年、栽培開始から150周年を迎える県産サクランボ。山形の誇りを未来へつなぐため、2025年は山形の農業にとっても節目の年になりそうです。